会長挨拶

消化器外消化器外科医にとって「融合の力」とは


第81回日本消化器外科学会総会
会長 比企 直樹
北里大学医学部 上部消化管外科学

2024年4月から施行される医師の働き方改革により、患者をチームで診療する重要性がますます高まっています。これは、外科医のみならず、他科医師、看護師、管理栄養士、薬剤師をはじめとするパラメディカルスタッフが総力を結集し、「融合の力」で最高の治療を提供するという理念です。

従来の主治医制では、個々の医師が治療方針を決定し、トラブルが発生した際も単独で対応することが一般的でした。しかし、チーム医療の導入により、治療方針の決定からトラブルへの対応まで、各専門家が知恵を出し合うことで、より包括的で質の高い医療が実現可能となります。これは、まさに「文殊の知恵」にも例えられるものであり、患者にとっても大きな安心感をもたらします。

また、腹腔鏡下手術と管腔内視鏡治療(ESD)の融合であるLECS(Laparoscopic Endoscopic Cooperative Surgery)は、内視鏡医と消化器外科医の「融合の力」による革新的な手術技術の一例です。さらに、近年の癌治療においては、外科手術単独ではなく、免疫チェックポイント阻害薬などの癌薬物療法と組み合わせた「融合の力」によって、初めて良好な長期予後が期待できるようになっています。

さらに、臨床で生まれた疑問(Clinical Question)を科学研究で解決し、その成果を再び臨床に反映させることもまた、「融合の力」の一環です。臨床現場と研究現場が一体となって取り組むことで、患者ケアの質が向上し、新たな知見が次々と生まれています。

こうした「融合の力」によって患者さんの医療に貢献することは、医療チームにとって大きな「ワクワク」に繋がります。この「ワクワク」をチームで共有し、互いに刺激し合うことで、さらなる団結力が生まれ、「融合の力」は一層強くなります。

われわれ北里大学外科は、上部消化管外科、下部消化管外科、一般・小児・肝胆膵外科、乳腺・内分泌外科の4部門で活動を行っております。この4外科による「融合の力」を結集し、第81回日本消化器外科学会総会を成功裏に収めるべく準備を進めております。皆様のご参加を心よりお待ちしております。